はじまりは政略結婚
「怒ってるよ。オレもひとりっ子だけど、涼子みたいな気持ちにはなれないな」

相手が実の兄なのに、ヤキモチを妬く彼を愛おしく思う。

兄は智紀を『子どもぽい』と言っていたけど、私には愛されている実感があって嬉しいのだ。

「そうだ、あの週刊誌のイケメンツートップ御曹司って、そのまま智紀とお兄ちゃんのことだったのね」

「そうだよ。祐也は、オレたちに後ろめたさがあったみたいだけど、ダブル結婚てのも話題になっていいよな?」

楽しそうに話されても、未だその感覚は分かりきれていない。

苦笑いだけを返すと、智紀は私の左手を取った。

薬指には、彼から贈られた婚約指輪をはめている。

結納後、仕事のない休日は、必ずつけることにしていたのだった。

「オレは海里を油断させる為に、わざと局内で由香と別れたっていう噂を流した。だけど、あくまで噂だったから、世間的にはオレたちの政略結婚は順調に進んでると、思われてる」

「うん……」

たしかに、週刊誌の記事もそんな書き方だった。

華やかな智紀と結婚できる私は、まるでシンデレラのようだと書かれていたっけ。
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