はじまりは政略結婚
さすが鋭いというか、根回しが早いというか、感心しながらも呆れてしまう。

「何でそこまでするの? 正直、智紀がそこまで私を好きな理由が分からない」

うまいことを言って、本当は違う意味があるんじゃないかと疑ってしまう。

例えば、どうしても会社の都合上、うちの出版社と手を組みたいとか……。

ただ、それならそれで、正直に話してくれた方がいい。

ウソの言葉を並べられることだけは嫌だ。

すると、彼は私の手を握ったまま歩き出し、そして言ったのだった。

「言葉で言っても、今の由香には伝わらないかもな。だから、直接見てもらった方が早い」

何を考えているのか、智紀は近くの立体駐車場に停めてある車の助手席に、無理矢理乗せた。

「ちょっと、どこに行くの? まだ19時前だし、仕事でしょ?」

すると、素早く運転席に乗った智紀はエンジンをかける。

「ああ、まだ仕事。だから、一緒にテレビ局へ行こう」
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