はじまりは政略結婚
「テレビ局⁉︎ イヤよ。私、そんなところに行きたくない……」

芸能人だのモデルだの、とにかく華やかな人は苦手なのだから。

そんな人たちがゴロゴロいる場所に私が行っても、浮いてしまうに違いない。

ただでさえ、この格好ーーー。

ベージュのツインニットに黒の膝丈フレアスカート、靴は同じく黒のエナメルラウンドトゥで、とにかく地味を絵に描いたような姿なのだ。

「何で? オレはまだまだ仕事だし、あんまり由香を一人にさせとくのは心配なんだけど」

智紀はハンドルを握ったまま、車を走らせず私を見つめている。

「大丈夫よ、子供じゃあるまいし。一人で何でも出来るわよ」

たった三歳しか歳が変わらない人に、子供扱いされるのは心外だ。

口を尖らせると、智紀は小さくため息をついた。

「そういう意味じゃないって。帰ってきて、どこにもいなかったじゃ、シャレにならないだろ?」
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