はじまりは政略結婚
憧れの涼子さん
「もしかして、疑ってる……?」

わざと険しい視線を送ると、彼はひょうひょうと答えたのだった。

「疑ってる、疑ってる。だいたい、さっきだって迷ってたろ? 迎えに来て正解だと思ったよ」

図星を突かれて返す言葉がない。

どうやら、智紀の隙を見つけるのは簡単じゃなさそうだ。

そして彼はサイドブレーキに手をかけた時、ふと私をもう一度見た。

「どうかした?」

「誰も見てないからいいよな……」

と言ったかと思うと、唇を重ねてきたのだった。

「と、智紀……」

軽く触れる程度ならまだしも、こんな場所で舌を入れてくるなんて……。

いつの間にか、サイドブレーキにあったはずの手は、私の頭を抑えていた。

強引なキスなのに、どうして押し返せないんだろう。

イヤだと言えば、さすがの智紀だって無理強いはしないと思うのに。

そんな心の声とは裏腹に、彼のキスを受け入れてしまっていた。
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