はじまりは政略結婚
まさか、本気でヤキモチを妬いてると思われてるわけじゃないわよね……?

ジロリと見ると信号が青に変わり、智紀は涼しい顔で車を走らせた。

「なーんだ。涼子を呼び捨てにしたのが面白くないのかと思ったよ」

ため息をつく彼に、こっちも呆れてため息が出る。

「あのね、涼子さんは私の大好きなお兄ちゃんの恋人なの。だから、少しは遠慮した言い方をしてよね。そう思っただけ」

「また『お兄ちゃん』か。お前、ホント祐也のことが好きだよな?」

真っ直ぐ前を見たまま智紀は話すけど、よく運転をしながらペラペラ喋れるなと思ってしまう。

私は、運転中に話しかけられるのが苦手だから、些細なことも彼とは違うと感じてしまった。

「私は、兄妹じゃなかったら、お兄ちゃんと付き合いたかったくらいだから」

そうだ、あくまで好みは兄の様なタイプで智紀じゃない。

嫌みも込めてソッポを向くと、智紀のクスクス笑う声が聞こえた。

「不毛な恋だな」

「余計なお世話よ。それでも幸せなんだから」

少なくとも、無理やり政略結婚をさせられるよりは、幸せな気持ちを実感出来る。

「だけどオレとなら、本当の恋が出来るよ?」
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