color ~蒼の色~
「あんたのあの絵、何描いたの?」


あのみんなが不気味がってた絵。

総二郎は、かけていた眼鏡をはずし、自分の胸に置いて言った。

「あー…、あれ?プール?」


…………いや、私に聞かれても。


「あれのどこがプール?」

「プールだろ、金網とか描いたし」


たしかにいっぱい線引かれてたなー。

いや、そうじゃなくて!


「プールの色塗ってないでしょ!?」

「塗ってあったろ?嫌そうな色」



もう全然わからない。


「なにそれ?あの変な色のカタマリが、なんでプールなの!?」

「だから、嫌そうな色してたでしょーが」

「そうじゃなくて!」


だーかーらー…。
そう言って総二郎は身体を起こした。



「“嫌々プール描いてる蒼”」

「は?」

「だから、絵のタイトル」


ポカンとしてる私に、なおもこいつは言った。


「嫌々プール描いてる蒼がおもしろかったから」


ほんっと、ほんっとこいつってば!!


「勝手にタイトル変えるな!人を変なカタマリにするな!」

「いいじゃん、嫌そうな感じ出て」


あれは俺の中でベスト3に入るぐらいの良作だと、笑った総二郎。
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