color ~蒼の色~
私の家は、両親、それに8つ離れた妹がいる。

父は商店街の一角で、小料理屋を営んでいる。

その頃母は、まだ幼い妹の面倒をみる専業主婦。

自宅と店は別で、ひっそりとしたアパート暮らしをする、いたって普通の我が家。

問題があるとすれば、両親が不仲…というぐらいか。


毎日仕事に明け暮れる父と、そんな父に不満を持つ母との喧嘩は絶えなかった。


確かに父はそういう人だけど、私は料理を作る父が大好きで、よく父の手を、

“魔法の手”だと言って、その姿を見てるのが好きだった。

学校が終われば、友達と遊びに……なんてことはなく、父の店に行き、掃除を手伝ったり、仕込みをする姿を見ていた。

私も父さんみたいになりたい。

そう言えば、父はうれしそうに笑い、包丁の使い方とか、簡単な料理を教えてもらっていた。


夕方になり、いつものように店の外を掃き掃除していると、知った顔に声をかけられる。


「お手伝いえらいね」

「すっかり看板娘だね」

………とか。


それが嬉しかったし、楽しかった。


けど、日が暮れて、

「そろそろうちに帰れよ」


そう父に言われるのが嫌だった。

ここにいたい、帰りたくない。

帰れば母が私に言うから。



「あんたまでどうして店に行くのよ!友達と遊べばいいでしょう!」


そして決まって言うんだ。


『なんで、こんな子になっちゃったんだろ…』

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