ロックンロールバンド

季節は二月だ。寒いのにこのライブハウスの薄汚い楽屋には、暖房器具一つなかった。


「あんたら、もう歳なんだろう。」


テープルを挟んで俺の前に座った髪を立ててメイクした若い男が聞いてきた。


俺は、薄いサングラス越しに男を観察する。


細い身体にピチピチの黒のTシャツを着て腕にタトウーが入っていたが、良く見ると寒さで鳥肌が立っている。


俺は、男の失礼な言い方は、軽く流して聞いた。


「君達若いね。羨ましいよ。俺達は、三十過ぎだよ。正確には三十一だよ。

君達は、何をやるのかな?」


俺達も今回は、ここのオーナーの要望でオリジナルをやらないようになっている。


オーナーは、古い友人で今回ベーシストの見つからなかった俺達の為にベースを弾いてくれる。


俺達は、年に数回しかライブハウスに出なくてベーシストは、たいてい何処かのバンドから借りていた。


かつての俺達のバンドのベーシストは、ジャンキーになって行方知れずなのだ。


「ラルクとエービーシーだよ。」


エービーシー?あーアシッドブラックチェリーねと思い出した。


ラルクとエービーシー糞だなと心の中で呟いた。

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