ヤンキー君と異世界に行く。【完】


なにそれー!?
この国の女子、めちゃくちゃ優遇されてない!?


仁菜は正直、この星の女子が少しうらやましくなった。


自分は待ってるだけでいいなんて……
こっちの世界では、少しでも自分を良く見せようと、みんな必死なのに。


(進学も就職も優遇されてるんだろうな……いいなあ……)


ぼんやり考えている間も、シリウスが深刻な顔で説明を続ける。


「このままでは、この国が滅びてしまう。
早急に環境を改善する必要がある。
そのために、魔族の王国にある『風の樹』の木の実が必要なのだ」


おっと、また新しい用語が出てきたよ……
颯、覚えれてるかな?


仁菜がちらっと見た颯は、今までの説明をゆっくりかみ砕いているように、口をモグモグさせていた。


「その木の実は、死んだ大地にも根付き、緑を復活させると言われている。伝説の木の実だ。

魔族からそれを奪うのが、異世界から来たお前の役目。
境界がなくなっている、今しかチャンスはない」


「ちょ、待ってください!
それならこの国の軍隊が行けば良いじゃない。
なんで颯が行かなきゃいけないの?」


仁菜が質問すると、ラスが立ち上がった。


「実際に見せてあげるよ。
この国の守り神と、異世界から来る勇者の予言を」


ラスはにこりと笑い、仁菜に手をさしのべた。




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