ヤンキー君と異世界に行く。【完】
仲間たちが空中を旋回し、もとの場所に戻ってきた鳥をにらむ。
すると、鳥の背から小さな黒い影が現れた。
「あれー?こんなところに人間がいるんだけど」
「本当だ。人間がいるねー」
二つの高い声が聞こえ、全員が緊張を高める。
鳥の背から星の光に照らされた二つの影は……
まるで鏡に写したように、同じ容貌をしていた。
漆黒の髪からのぞく、獣のようなとがった耳に、ふさふさのしっぽ。
目は灰色で、こちらを見下ろしている。
「双子……?」
「みたいだな」
(ちょっと可愛い……まだ子供みたい。
あの子達が、魔族……敵だっていうの?)
仁菜は信じられなくて、彼らを凝視した。
「この地に何をしにきた、魔族!」
アレクが叫ぶと、彼らは「えー」と顔を見合わせた。そして……
「あのねー、俺たちこの泉の剣を取りにきたんだー」
「抵抗する精霊族は、全員殺していいって言われたんだよねー」
「ねーっ」
無邪気な表情の彼らの口から出たのは、とんでもない言葉だった。
(なんなの、あの子達……)
颯と仁菜は、黙って成り行きを見守る。
「もしかして、人間も剣をとりにきたのー?」
「きたのー?」
2人が言う。
「ああ。お前たちには、渡せない」
シリウスがきっぱりと言い返す。