ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「くっ!!」
カミーユが他の仲間が狙われている隙をつき、何本も矢を射る。
それは鳥の腹や羽に命中し、悲鳴を上げさせ、攻撃を一旦やませることに成功した。
「あっ、いぢわるー!」
「いぢわる、ダメなのー!」
「うるさい!降りて来い、魔族!」
シリウスがふらふらと弱まった鳥の上に乗っている双子に怒鳴る。
「魔族って名前じゃないもん。ぼく、ルカだもん」
「あたし、ロカだもん」
(男女だったんだ……)
どっちもどっちかよくわからない、中性的な顔をしていた。
「どうしよー」
「うーん、人間ほっといて、剣を奪って帰るー」
「そうしよっかー」
双子はそう言うと、うんうんとうなずきあった。
そして、ルカと名乗った方が、鳥の背の上で立ち上がる。
何をするのかと思えば……
「どっぼーん!」
泉に向かって、まっさかさまに飛び込んだ。
「待て……っ!!」
アレクが叫ぶ。
全員が泉のふちへ駆け寄る。
しかし、ルカの体が水面に届くか届かないかのところで……。
──くわん。
水面が、不自然に揺れた。
(え……っ)
仁菜は目を見はる。
他の仲間たちも同様だった。
泉の表面が突然、まるで大きな水泡のように、丸く盛り上がったのだ。