ヤンキー君と異世界に行く。【完】


「くっ!!」


カミーユが他の仲間が狙われている隙をつき、何本も矢を射る。

それは鳥の腹や羽に命中し、悲鳴を上げさせ、攻撃を一旦やませることに成功した。


「あっ、いぢわるー!」


「いぢわる、ダメなのー!」


「うるさい!降りて来い、魔族!」


シリウスがふらふらと弱まった鳥の上に乗っている双子に怒鳴る。


「魔族って名前じゃないもん。ぼく、ルカだもん」


「あたし、ロカだもん」


(男女だったんだ……)


どっちもどっちかよくわからない、中性的な顔をしていた。


「どうしよー」


「うーん、人間ほっといて、剣を奪って帰るー」


「そうしよっかー」


双子はそう言うと、うんうんとうなずきあった。


そして、ルカと名乗った方が、鳥の背の上で立ち上がる。


何をするのかと思えば……


「どっぼーん!」


泉に向かって、まっさかさまに飛び込んだ。


「待て……っ!!」


アレクが叫ぶ。


全員が泉のふちへ駆け寄る。


しかし、ルカの体が水面に届くか届かないかのところで……。


──くわん。


水面が、不自然に揺れた。


(え……っ)


仁菜は目を見はる。

他の仲間たちも同様だった。


泉の表面が突然、まるで大きな水泡のように、丸く盛り上がったのだ。



< 97 / 429 >

この作品をシェア

pagetop