ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「ルカっ、危ない!」
ロカが叫んだときだった。
巨大な水泡は、ルカに当たって、ぱちんと弾けた。
まるで、シャボン玉が割れるのをスローモーションで見ているような感覚。
無数の水柱に押され、ルカは泉から空へと放り投げられた。
「ぎにゃーっ!!」
ルカは悲鳴を上げる。
そして放り出されたルカを、ふらふらの鳥を操ったロカが受け止めた。
「あれが、エルミナさんの呪い……」
思わず、口をついて出た言葉。
(泉に入ろうとする者を、拒絶してるんだ)
そうとしか思えない。
じゃあ、どうする?
どうすれば、呪いがとける?
「ダメじゃーん、ルカー」
「そんならロカが行けよー、ぷんぷん」
双子は鳥の背で、言い合いを始めた。
(剣を取るなら、今しかないのに……!)
仁菜は静かになった泉の表面を見つめる。
「……ニーナ」
「はい?」
突然隣の颯に声をかけられ、マヌケな声が出る。
そんな仁菜に、颯はひとこと。
「今のうちだから、行って来るわ」
「は……?」
「じゃっ、そういうことで!」
「まっ、待て待てーい!!」
仁菜の静止も聞かず、颯は走り出す。