Blood Tear


 「ハハハハッ……あ、失礼。20歳…そうですかぁ。ですが、あぁ見えましてお嬢様、30手前、28歳なのですよ」


 「え!?」


思いもしない事実に素っ頓狂な声を上げてしまったコウガ。


少し恥ずかしそうな顔をし頬をかく。




 「あの容姿ですからね、仕方ありません。他の方々も貴方と同じ意見だと思いますよ?」


くりっとした茶の瞳に張りのある肌。

小さく整った顔立ちにほっそりとした華奢な体つき。



柔らかく微笑む小柄な彼女は、どう見ても自分より年上とは思えない。


10代後半の幼さの残る少女にしか見えなかった。




 「お嬢様は貴方方と同じように、一般の人にはない力を持っております」


コウガの反応を楽しんでいるのかクスリと笑うとシェノーラについて語り出した。




 「どんな傷も病気も治癒する力。お嬢様はそんな力を持っております。まぁ、死から救う事は無理ですが」


いくら強い治癒の力を持っていたとしても、人を死から蘇らせる事は不可能。


神の領域に踏み込む事は許されないのだ。




 「しかし、その力を使うには代償を払わなければなりません」


 「代償?」


 「視覚、聴覚などの五感、臓器や神経、そして記憶や感情……様々なものを奪われてしまう……」


語るジークを見上げ問うと、彼は頷き言葉を続ける。


そんな彼の表情は真剣そのもの。

先程までヘラヘラと笑っていた彼とは思えない程の変わりようだった。




 「何を失うのかはわかりません。その時の神の気紛れ……心臓を奪ってしまえば、お嬢様は命を失ってしまう。 しかし、神はそう簡単に彼女を殺そうとはしない……じわじわと彼女を苦しめ楽しんでいるんです……」


無意識なのだろうか、彼の拳は力強く握られる。


彼女を苦しめる神への憎しみからか、何もできない自分の不甲斐なさからか、握る拳は震えていた。










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