Blood Tear
「…ん……?」
肘掛けに置く左手に何か違和感を覚え片目を開ける。
彼の青い瞳に映ったのは、広いローブの袖から覗く細い指先。
女性は不思議そうな顔をしながらレグルの手に触れていた。
「…人というのは、温かいのですね……」
見た目は人と変わりないのだが、体温を持たない彼女。
シェイラに抱き締められ人の温もりを知ったのか、確かめるようにそっと彼の手に触れる。
人の心を持ち、感情を持った彼女。
しかし、今目の前に居るのは人ではない。
人の手によって造られた人形。
本来存在しないもの。
在ってはならないもの。
ふとそんな言葉が頭を過ぎり、彼は開けた片目を再び閉じると彼女の手を優しく握った。
初めは驚きもしていたが、彼女は彼の手の温もりに微笑むと目を閉じる。
肌寒くなり席を外していたシェイラ。
温かい珈琲を用意し戻ってみれば、手を握りながら眠りにつく2人の姿。
微笑ましいその姿にクスリと笑うと、起こさないようそっと毛布をかける。
そしておやすみなさいと静かに呟くと、仄かに点っていた灯りを消し其処から立ち去った。