Blood Tear


店を出ると先程の雨は既に止んでいた。


空を見上げると、雨など降っていなかったように澄ん だ青空が広がる。



そろそろ宿を探そうと町を歩いていると、海に面する防波堤に腰掛ける人影を発見。


銀色の髪を風に靡かせる女性。
クレアと呼ばれていた女性である。



彼女を見つけたコウガは一度足を止めると彼女の元へと歩き出す。




 「おい、ちょっと……」


突然方向変換をしたコウガに声をかけるが、彼は足を止める事はない。


彼の歩む先にいる人物を確認するとレオンは灰色の髪を乱暴にかく。




 「あの……」


 「!?」


コウガは彼女に歩み寄るとそっと声をかけた。


すると彼女は驚いたのか肩を震わせ振り返る。


見開かれた赤い瞳。


その瞳は微かに潤み、色白の頬には涙が伝った跡が微かに残る。




一瞬驚いた表情を見せた彼女だったが、彼女はすぐさ ま地を蹴り飛び退くとコウガと距離を取った。


瞬時に出した巨大な鎌を手にコウガを睨み付ける。




 「待ってくれ、戦う気はない」


両手を挙げ戦意はないと意志を示すが、鎌を構えたま ま威嚇を解く事は無い。


そんな彼女にコウガはポケットからある物を取り出し彼女に見せる。




 「これ、君のだろ?」


コウガの手にあったのは、シンプルなシルバーアクセ サリー。

先程の店で拾ったブレスレットである。



それを目にした彼女はチラリと自分の右手首へと視線 を送る。


それからすぐには威嚇を解く事はなかったが、数秒後鎌を手放した。


戦闘態勢を崩した彼女に歩み寄るとブレスレットを渡す。



彼女はそれを大事そうに握ると、ありがとうと聞こえないような声で小さく呟いた。










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