Blood Tear


再び防波堤に腰掛けた女性、クレア。

その隣にコウガも腰掛ける。


2人の間に空く微妙な距離。


そこに突っ込まず、しかめっ面をしながらレオンは防波堤にもたれかかった。




 「1人で旅を?」


波の音が響く中、コウガは彼女に問い掛ける。


すると波を見つめながら無言で頷く。




 「…裏切り者……」


 「裏切り者?」


銀色の髪を潮風に靡かせ、唐突に口にした言葉。


その言葉に疑問符を受けべ、ゆっくりと繰り返す。




 「彼奴を殺す為、いろんな町を旅してる」


どこか遠くを見つめる赤い瞳。

その瞳は悲しみと憎しみの入り混じったを色をする。




 「私達を狂わせた、彼奴を……」


ザーと流れた穏やかな波が砂浜に描かれた足跡を消 していく。


その光景を見つめる彼女の拳は力強く握られていた 。




 「でもどうしてこの町に長居を?」


 「彼奴がいるから…彼奴がこの町にいるから、私もここにいる。ただそれだけ」


その人物の存在がわかるのだろう、顔を伏せ目を閉じ る。


そして精神を集中させるようにゆっくりと息をする。



波の音だけが聞こえる中、突然顔を上げた彼女は何かを感じ取ったのか防波堤を飛び降りどこかへ走り出す。



その後ろ姿を見つめながら、コウガも立ち上がった。




 「後を追ったりしないよな?」


レオンは眉間に皺を寄せながらどこかへと歩き出し たコウガに問う。




 「俺は嫌いだ、あの女…嫌な臭いがする。血の臭いが 染み込んだ、嫌な臭いが……」


レオンの問いに答えず足を進めるコウガ。


その後ろ姿に訴えかけが、彼は耳を傾けようとはしない。




 「同じなんだ……」


 「同じ…?」


 「俺達と一瞬なんだよ、彼女も……」


一度立ち止まり、背を向けたまま呟く。


背を向けている為彼の表情を伺う事は出来ないが、スカイブルーの瞳は悲しみを含んでいるのだろう…



きっと、否、絶対に…






赤く染まり始めた空を見つめ乱暴に頭をかくと、再び 足を進めだしたコウガの後を仕方なくついて行くので あった。










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