恋するマジックアワー
電車に乗って、降り立った場所はショッピングモールが立ち並ぶセンター街。
街路樹にはたくさんのイルミネーション。
クリスマスオブジェ。
駅周辺はすごく賑やかで、たくさんの人で溢れかえっていた。
「蒼空、何が欲しいって?」
「うーん……」
いくつものお店を眺めて、休憩がてら入ったカフェでパンケーキを頬張りながら留美子を見た。
蒼空とは、留美子の10歳下の弟。
その弟のクリスマスプレゼントを買いに来ていた。
まだ小学生に上がったばっかりで、留美子は弟をすごく可愛がっている。
わたしも何度か会った事あるけど、その子がものすごく可愛くて。
留美子を小さくしたみたいで、ほんとお人形みたいなんだ。
「実はさぁ、パパもママもなんでも買ってあげちゃうから、困ってるんだよねぇ」
「おじさんもおばさんも、蒼空には甘いもんね」
いわゆるお金持ちの留美子の家は、両親もちょっと金銭感覚がずれている。
前にお邪魔した時に、お茶とお茶菓子が出てきたんだけど……それが超有名店のお高いチョコレートでびっくりしたんだ。
「そーなんだよぉ。だから、パパ達が買わないようなものをあげたいなーって」
留美子の目の前には、ふわふわのパンケーキの上にこれでもかってほどのクリームがまるで富士山みたいに乗っかっていた。
それを幸せそうに頬張りながら、留美子は指折り数えて見せる。
「リストはあるんだよ? えっとぉ、わたしとお揃いの湯呑でしょ?あとはぁ、お揃いのセーター。あ、でもやっぱりこれからは風邪も流行ったりするし、ちょっと趣向をかえて喉を潤す加湿器とかいいかも」
「ちょ、ちょっと待って!」
「え?」
パクパクとクリームが、ピンク色のぽってりとした唇の中に吸い込まれていく。
留美子はキョトンとして首を傾げた。
「あの……あげるのって蒼空でしょ?小学1年の」
「うん。そうだよ?」
「……」
はあ……。
留美子って、ほんとプレゼントのセンスが怪しいというか……。
17歳の誕生日に、金閣寺のストラップ貰ったのをたった今思い出した。