恋するマジックアワー
宙に浮いたまま、行き場をなくしたわたしの気持ちはチリチリとくすぶってる。
大丈夫。
得意じゃない。
自分の心を消すの、得意だもん。
洸さんに恋していたわたしの気持ちを消して
それで、なにもなかった時のわたしに戻って……
卒業までの1年。
大丈夫。きっとできる。
元に戻れる。
ただの同居人に戻って、また洸さんと朝のコーヒー飲んで。
わたしはあの部屋て、ひとり暮らしするんだ。
真冬の学校はすでにたくさんの人で賑わっていた。
留美子と並んで教室へ向かう。
「おはよー」
「正月で1キロも太っちゃったぁ」
「はよぉ」
ざわめきの中、いろんな話し声がする。
そこへ、聞きなれた声が飛び込んできた。
「おーす」
顔を上げると、少しだけ髪の伸びた牧野がそこにいて。
マフラーに顔を埋めたまま眠そうにあくびをかみ殺した。
変わらない。前となにひとつ。
洸さん、大丈夫だよ。
わたし、洸さんの迷惑にならない。