恋するマジックアワー
キーンコーン
カーンコーン
授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
それと同時に、わたしは席を立った。
さっさと教室を出て行った担任の背中を呼び止めた。
「先生!」
「ん?立花か、どうした?」
「あ、あの」
って、わたし!
なにを言うつもりなの……。
先生に聞きたい事なんてなんにも……
「あの、沙原先生は今日……」
「沙原先生?」
なんにもないけど、聞くだけなら。
担任は一瞬キョトンと目を瞬かせ、無精髭をたくわえた顎をひとなですると思い出したように言った。
「ああ、沙原先生は今日はお休みだよ」
「え?」
「病欠だ」
「……」
え? 病欠……?
脳裏に浮かんだのは、あの日の洸さん。
わたしを見て驚いた顔をしていた洸さんの声は、たしか掠れていた。
まさか、あの時から調子悪かったとか?
ううん、まさか。
だって、あれから2週間はたってる。