恋するマジックアワー
ピンポー――ン
「ど、ど、どうしよう、洸さん」
「お前、言うなって言ったろ」
「言ってないよ……っ! 洸さんと一緒にいるってことは。ただ……引っ越す前に、ここの住所は教えてあったと言うか……。だって、愛さんだと思ってたし……」
ソファに座った洸さんからジロリと見上げられて、最後の方はモゴモゴとなってしまった。
煮え切らないわたしを見て、洸さんの呆れたようなため息が聞こえた。
「はあ……。ま、お前は寝てろ」
「え?で、でも……」
「俺がうまく言うから。上がってもらうぞ」
「えッ」
そう言うと、さっさと玄関へ向かった。
いいの?ここへ来られても……。バレちゃうよ!?
ま、まずいでしょ?
サーッと血の気が引いて行く。
思わず洸さんの後を追っていた。
「洸さん、まっ……」
ガチャ!
勢いよくリビングの扉を開けた、その時。
「あーッ、海ちゃん!」
「る、留美子……」
玄関にいる洸さんの向こう側から、見慣れた顔が現れて、わたしの顔を見るなり靴を脱ぎ捨て駆け寄ってきた。
そのまま抱きつかれて、バランスを崩しそうになる。
「海ちゃん、全然連絡とれないんだもん。よっかたあ、何かあったんじゃないかと思った」
「……ご、ごめんね」
涙声の留美子。
動揺していた気持ちが、少し落ち着いた気がした。
わたしより小柄な留美子の背中にそっと腕を回して、「ありがと」って小さく呟いた。