恋するマジックアワー
慌ててその後を追いかける。
教室を出て、廊下の角を曲がったその時。
目の前に現れた何かに、顔から思い切りぶつかってしまった。
ドンッ
「きゃッ」
そのままバランスを崩し、倒れそうになる寸前、腕をひかれなんとか踏みとどまる。
「大丈夫?」
「あ、はい……ありがとう」
アタタ……。鼻をさすって引き戻してくれた事にお礼を言うと、聞き覚えのある声にハッとして顔を上げた。
「……ま、牧野……」
「どうしたの、そんな慌てて。今、そこでるみにもすれ違ったけど」
驚いたような、ちょっと呆れたように爽やかな笑みを零す牧野。
わたしの腕を離すと、消えて行った留美子の背中を追っているようだ。
そうだ……!
「お願いッ」
「え?」
両手でその腕をギュッと掴む。
「留美子を追っかけて!」
「は?」
意味が分からないと怪訝そうに眉をひそめ、牧野は小さくため息を吐いた。
そして、真っ直ぐわたしを見下ろして、静かに口を開いた。