恋するマジックアワー(仮)
太陽がずいぶん傾いてきてるけど、それでもまだジッとしてるだけでジワリと汗をかいた。
閉め切った部屋は、ちょっとだけ息苦しい。
窓を開けると、部屋中に夏の風が吹き込んできた。
首筋の汗に触れて、いくぶんか涼しく感じる。
真っ黒で癖のない髪を撫で、白いノースリーブから風が入り込み、あたしの体を駆け抜けた。
「……」
……素敵なところだな。
眺めも、いいし……。
うん。 いい場所。
並んだ家々の屋根の向こう側に、深い緑の山並みが見て取れた。
その向こう側にまるで綿菓子みたいな入道雲。
大きくなり過ぎた入道雲の頭は、横に伸びていた。
さっきからずっとうるさかった蝉の合唱の中に、ヒグラシの声が混じっている。
はあ……。