だから、恋なんて。
「やっぱり、お二人の事は私なんかが口出せることじゃないと思います」
「はぁ」
「ちゃんと、千鶴と話してください」
風船がしぼんだように勢いが無くなった直人さんは、「すみません」と頭を下げてから立ちあがる。
追い返すようで少し気の毒にも思うけれど、実際、まだ千鶴からだって何も聞いてないのに、私が話せることなんて何もない。
玄関のドアを開けて振り返る直人さんは、力なく笑う。
「今日はほんとに突然すみませんでした。あの…千鶴のこと、よろしくお願いします」
そういうと、軽く頭を下げてからエレベーターのほうへ歩いていく姿を見送る。