だから、恋なんて。

無言で近づいてきた榊が、身長差のある結城先生を下から一睨みして。

そしてそのまま榊に腕を取られて、引きずられるように休憩室まで連れていかれる。

「美咲さん、あいつと何かあるんですか?」

「あいつって…」

「さっきの、結城とかいう奴」

榊ちゃん、さすがに~とかいう奴ってのはどうかと…。まぁ、私のチャラ医者ってのもどうかと思うけど。でも私は口に出して言ってるわけではないし。

「どうなんですか?」

言い淀んでいる間に、榊が怖い顔して詰め寄る。

「ないない、全然なにもないよ」

何か不満がありそうな榊は、まだ怖い顔のまま「ほんとに?」なんて疑っている。

「ないって、あんなチャラいの。大体、何なの?こんなところまで引っ張って来て」

「いいえ、何もないならいいんですけど」

そう言って、私に詰め寄るのは諦めたのか、さっさと踵を返して休憩室を出ていきながら、「全く青見といい、結城といい…」なんて舌打ち交じりに呟く。

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