だから、恋なんて。

「何にもよくないわよ」

「どこが嫌なんです?」

「どこがって…まず、人間としてあの軽さが受け付けない」

「ふぅ~ん」

私の答えを聞いて考えるように首を傾げながら、またゆっくり自分の受け持ちベッドに戻る。

なんだったのよ、一体…。

榊だったら「職場なのにそんな非常識なこと許せませんね」とかなんとか言って一緒に師長にでも文句言ってくれるかと思ってたのに。

慣れ親しんだはずのICU内が完全アウェーの様相を呈してきている。

それにしても、こんなに大袈裟なことをしてまで、あの医者が私に絡んでくる理由がわからない。

あの噂を聞いて私に声をかけてきたのなら、こっそり近づいてくるだろうし。

それに一度は断ったのだから、さらにしつこくする意味がないような…。

だって、こんなに周りにアピールしておいて、下世話な噂につられて……なんて知られてしまったら、本人も格好
がつかないと思う。

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