だから、恋なんて。

指示には問題なかったはずだけど…一体何だったんだろう。

とかなんとか考えている暇もなく、次々にやらなきゃならないことがあって。

改めて考える暇もなく、その日の業務は終了を迎える。

「お疲れ様です」

くるりとフロアを見渡すと、まだパソコン画面に入力している榊が軽く手を振る。

うん、やっぱりまだ終わりそうにないみたい。

いくら仕事の早い榊でも、ついさっき飛び入りで入った緊急オペ後の患者さんの受け入れで残業だろうな。

その他のスタッフもなんだかバタバタと忙しそうで、「お先です」と唯一デスクに座っている師長に声をかけて。

お~、なんて気の抜けた声に見送られながらICUを後にする。

たまには私だって早く終わったっていい。

ICU内では一番早く終わったけれど、定時よりは三十分ほど過ぎた廊下は人もまばらで。

晩御飯は何だろうかと思いながら、ロッカーまでの道をプラプラと歩く。

関係者しか通らない廊下の角を曲がって、ロッカー前の自販機が視界に入り。

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