だから、恋なんて。
「あ、美咲さん!」
その声で、しゃがんで自販機の中に手を入れる男が誰だかわかる。
「…お疲れ様です」
この間の夜勤終わりがチラついて、思わず足を進めるスピードが遅くなる。
にこにこ笑いながら躊躇いもなく近づいてくるチャラ医者は、スッと目の前にピンクの箱を差し出す。
「これ、あげる」
「いりませんけど」
よく見なくても可愛い文字でいちご牛乳と書かれたそれは、とても甘そう。
もらう理由もなく、それに多分飲みきることができない激甘のそれ。
手を差し出すわけでもなく、あっさり断った私を驚いたように見つめる男。
「え、なんで?」
「別に飲みたくないです」
「これ、すごく美味しいよ?」
「じゃあ、あなたが飲んだらいいじゃないですか」
「うん、僕も飲むよ?だけど、美咲さんと美味しさを共有したいし」
チャラいだけじゃなくてやっぱり馬鹿なのか、気持ち悪いことを言い出す始末。