だから、恋なんて。

職員でもあまり使わない階段は、小さな声でも意外と響く。

だからこっちは目一杯声を絞ろうとしてんのに……!

「うわっ、ここって密会にぴったり~」

なんて能天気な声を響かせる医者の腕をバシッと叩く。

「静かな声で話して」

「なんで?」

「声が響くから」

「ダメかな」

「………」

もうほんとに何考えてるのか、何をしたいのかさっぱりわからない。

察しが悪いのか、わざととぼけてるのかも。

こんなとこで二人っきりでいるのを見つかるほうが確実に噂になる。

だからさっさと話を切り上げたいのに、そんな危機感はこれっぽっちも感じてない医者は、「ん」と自分はストローを咥えたまま、ご丁寧に私の分にもストローを挿して差し出してくる。

「だから、いらないって…」

「ん!」

目の前まで持ってこられるパックを見ていると、少し喉が渇いたようにも思える。

さっきやたらと緊張したからだろうか。

でもこんな甘ったるいの飲んだら余計に喉が渇くし…。

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