だから、恋なんて。

そうは言っても、こんなことをやり取りするためにここにいるわけじゃないし。

軽く溜息をつきながら、水滴のついたいちご牛乳のパックを受け取って、ストローを口に含む。

「ん…?美味しい」

「でしょっ?」

またしても階段に響く大声で同意を求めてくる医者を忌々しげに睨むけれど。

「美咲さん、今日も忙しそうだったし。疲れてるとこういう甘いのがいいよ」

屈託なく笑う医者を見ていると、なんだかイライラしている自分が馬鹿らしくなる。


…この人、ほんとに何を考えてるんだろう。

私にかまってもなんの得にもならないのに。むしろマイナスにしか働かない気もするし…。

「あの…、知らないの?」

わざわざ暴露することでもないけど、この男の行動の意図がわからなさすぎるから。

「私の噂」

相変わらずストローを咥えたままで首を傾げる医者に問いかけてみる。

シパシパと瞬きを数回繰り返して、やっとストローから口を離す。
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