だから、恋なんて。
――バタバタッ
お世辞にも軽やかとは言えない足音が静かな住宅街に響く。
何事かと公園の入り口に目をやるけれど、街灯の明かりで薄ぼんやりとしかそのシルエットさえもわからない。
やっとチャラ医者がやってきたかと思ったのに、街灯の加減で顔の判別までできずにいたのに。
「美咲さんっ、ごめん!」
ブランコから立ち上がったまま固まっている私のすぐ前まで走ってきたかと思うと、崩れ落ちるように隣のブランコに腰を下ろす。
ハァハァと荒い息を吐きながら俯く医者は、頭さえなかなか上げられない様子で。
時々ゲホゲホっとむせ込んだりもしているから。
「…大丈夫?」
つい声をかけてしまう。
そんなに頑張って走ってきちゃったの?病院から歩いても五分もかからないかもしれない距離なのに。
ちょっと体力無さすぎなんじゃあ…。