だから、恋なんて。
徐に立ち上がったかと思うと、ふふっと笑いを零してからなんとも嬉しそうに笑顔を見せる。
「絶対帰ったと思ってた」
うん、まぁ、紙一重で帰る寸前だったけど。
「一段落してから時計見て、めちゃくちゃ焦って、病棟から全力疾走してきた」
それでも大したことない距離だとはおもうけどね。
「やっぱり……美咲さんなら彼女にしてもいいわ」
「は?」
ちょっとちょっと、だからなんで上からなのよ。別に私はお願いしてないからね。
きっと、露骨に嫌がる顔をしていたんだと思うけど。
「あ、傷ついた…」なんて言いながらも、苦笑しながら両手を差し出してくる。
言わなくても、立ち上がるために手を貸してくれているのは、わかる。
それでも、すぐにその手をとれるほど、簡単じゃない。
なんでこの人はこうやってすんなり距離を縮めてくるのか。
距離をとろうとしていても、思うように取らせてくれない……。