だから、恋なんて。

どこに行くかも気になるし、つかまれている手首も気になるけれど。

それよりも街灯に照らされて通り過ぎる人の目が気になってしょうがない。

「一緒にいるところ、見られたくない?」

キョロキョロする私を上から見おろす医者は、苦笑しながらもその表情はなんだか複雑で。

「そりゃあ…まぁ」

「じゃあ……ウチくる?」

「は?行くわけないよ」

「だって、外のお店は無理なんだよね?俺は、美咲さんチでもいいけどぉ」

「む、無理!って、私の話、もう終わったけど」

「俺のは終わってない」

さっきまでのふざけた口調とは違う落ち着いた真剣な声。

「じゃあ、ここで…」
「ムリ」

「…っ、なによ、真似しないでよ」

どうにかして逃げようと、つかまれたままの手を振りほどこうとするけれど。

緩やかな笑みを浮かべる口元とは裏腹に、力の込められたそれに動かすことができなくて。
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