だから、恋なんて。
それでも、千鶴はそんなこと気にせず、今まで溜め込んでいた胸の内を叫ぶ。
「なかなか妊娠しなくて、でも私の事を責めもしない直人に申し訳なくて……だんだん卑屈になって、前の奥さんとの間にも子供がいなかったらよかったのにとか、こんな私と結婚して直人は後悔してるんじゃないかとか考えて。そんな自分を慰めたくて……妊娠しないのはピルを飲んでるからだって言い訳があれば、自分を助けることができるから……」
「千鶴………」
「……どうしようもなく、怖いのよ」
私には、想像もつかない千鶴の悩み。
結婚していたら何があっても二人で乗り越えていけるような、そんな夢は未婚の私にとっては少なからず頭にあって。
千鶴の不安も、焦りも、直人さんが受け止めて一緒に背負っているものだと思っていた。