だから、恋なんて。
言葉を失う私の隣の入り口からは、その後にも研修医と看護師三名がぞろぞろと上がってくる。
遅れてきた看護師はみんな日勤メンバーだったから、きっとアイツの患者さん絡みで何かあって遅くなったんだろう。
あ…、この間アイツに誘われてた高橋さんもニコニコしながら二人の近くに陣取ろうとしている。
「……チッ」
明らかに隣で聞こえた舌打ち。見ると串をくわえたままの榊がジトッとした目でそちらのほうを睨んでいる。
「ど、どしたの、榊」
「いえ、別に。あいつらからも会費、徴収してきます」
まだ口に何かを頬張ったまま立ち上がって歩いていく榊の後姿を見送る。
いつもはワンピース通勤の榊だけど、今日は着替える必要がないからか細身のジーンズにテロっとしたシャツを着ていて、いつもよりオトコ度が上がっている。
だからかな、アイツの背中に軽く蹴りを入れながら手を差し出す姿は、まるでヤミ金の取り立てのようにも……見える。