だから、恋なんて。
そういえば話するのってあの日以来なんじゃあ……。
ICUに来てもチャラチャラと他の看護師と話してばかりで、全然近寄ってこなかったくせに。
フラフラと近寄ってきて、簡単にこっちの気持ちをぐちゃぐちゃにかき乱して。
能天気に新しい串を口に入れてる医者をみながら、段々とイライラが増してくる。
「急変だったの?」
「ん?あ…ちょっとバイタル安定しなくって。青見先生にも助けてもらってなんとかね」
「ふぅん、お疲れ様……青見先生と、同期くらいだっけ?」
視線の先に映る青見先生をぼーっと見ながら、なんとなく口にする。
「え?あー…っと、先生のほうが一つ下かな」
「へぇ……」
見えない、絶対に見えない。あの冷静沈着な青見先生がこのチャラ医者の下だなんて、仕事ぶりだけじゃあ絶対ないわー。
今だって部活帰りの中学生みたいに次から次へと串を口に入れるコイツとは比べ物にならないくらい落ち着いた佇まい。
ぐるりと看護師に囲まれて質問攻めにあいながらも、どこか空気感が違ってゆったりとお酒を楽しんでいる。