だから、恋なんて。
それでも、なんだか助けられたような雰囲気になって、余計にやりづらいったらこの上ない。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、明らかにチャラ医者の誘導で、その場の話題が直人さんの仕事の話や部屋の家具なんかの話に転換される。
私を庇いながら、千鶴と直人さんも気分悪くならないようにその場をコントロールする。
なんだかんだで、コイツのこの飄々とした態度が嫌なんだと再認識してしまう。
この間のICUで患者さんと揉めた時も、その他にも細々としたスタッフ間の伝達不足も、頼んでもないのに間に入ってきたかと思うと、軽口を叩いてなんとなくまとめてしまう。
誰にでも調子が良くて、誰にでも愛想がいい。
自分だけに向けられていると勘違いさせて、期待させて……その先は踏み込んで来ない。
そんなコイツの態度に振り回されていると認めるのも、気付くことでさえ嫌気がさす。
あんな公衆の面前で言われた「彼女にしてもいい」発言に素直に喜ぶほど馬鹿じゃない。
むしろ私が馬鹿にされてるの?とムカついてしまうくらいだし。
自分が何に苛立っているのか、何が物足りないと感じているのか。
それが何か自覚できないなんてことは、いくらこのウン十年女子をお休みしていたからって、ない。
自覚してしまえば症状が増々深刻化しそうで。
ただのスタッフとしての自然な振る舞いなんて忘れてしまいそうで。
となりで上機嫌な医者を横目に、こっそりと小さな溜息をついた。
……だから、恋なんてややこしいし、面倒くさい。