だから、恋なんて。

熱燗よりもやや温くなっていたけれど、瞬時に胃の奥の奥まで染み渡るアルコール。

と、同時に鼻から抜ける強烈な刺激に、じわりと涙が滲んだのは私だけじゃないはず。

助けを求めるように雫を見ると、満足気に頷いて、今度はグラスに入ったお水を渡してくれる。

有難く受け取ってこくこくと飲み干すと、なんとか胃の中で中和される気がする。

はぁ~っと吐く息でさえまだお酒の匂いがぷんぷんしていて、一気飲みなんてしたのどれくらいぶりだろうかと考える。


「私、ちゃんと終わらせようと思うんです」

えらくすっきりした声だった。

それでいて、長年大切にしてきたぬいぐるみを捨てなきゃならない、そんな寂しそうな顔をしている。

「それって、どうやって……」

終わらせるの?という言葉はもごもごと口のなかに消える。

終わらせる、なんて私が軽々しく口に出しちゃいけない気がする。

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