だから、恋なんて。

「う~ん……それって、昨日鎌田が当直だったこと?それとも、噂のこと?」

答え難そうにしているわりに、開き直ったように言い当てられる。

「……どっちも知ってたんだ?」

あまりにも穏やかな声に、チラリとその横顔を盗み見ると、いつもよりも真剣な瞳にぶつかった。

しまった、でも、どうしよう、でもない。

しいて言うならば、仕方ないなぁとでも言いたそうな表情。

もっと私、傷ついていいはずよね?もっと逆上して、責めたっていいはずだし。

ズルいよね、ほんと。

そんな顔されてたら、こっちだってどうしたらいいかわからない。

もっと大慌てで、必死で取り繕って欲しいのに。

「あ~あ、もうあの噂の呪縛から逃げられたかと思ってたんだけどな。だって何年も経ってるじゃない?」

あまりにも想定外で、ちょっと自虐的な言葉で無理矢理明るく取り繕う。

< 347 / 365 >

この作品をシェア

pagetop