だから、恋なんて。
くるりと身体をまわして、手すりにもたれた医者の顔は、逆光で良く見えない。
それをいいことに、もう一つ、気になっていたことを口に出す。
「どうして、私?……だって噂なんて信じてなかったんでしょ」
噂につられたわけじゃなくて、からかっているわけでもない。
じゃあ、そもそもどうして私?
って、まぁ、これでコイツが本当に私に好意を持ってなかったら、一生立ち直れないと思うけど。
それでも、さっき私を見ていた瞳を信じたい。あの、穏やかで愛しさに満ちた瞳。
さすがに恋愛経験値の低い私には、アイツの目を見ながらなんて高難度なことはできなくて。
手すりをぎゅっと両手で握って、その言葉の返事を待つ。