だから、恋なんて。

お互いがなぜか気まずいような、恥ずかしいような空気の中。

その静寂を破る救世主のように、ピリリリリッとチャラ医者のポケットでPHSが震える。

って、そうじゃん!コイツは普通に勤務中だったんだ…。

自分が仕事終わってるからって、コイツもそうじゃないし。


あー…ほんと、あり得ない。

こんな色恋沙汰で勤務中の人間を引き止めてるって、いい歳した看護師がすることじゃない。

やたらと焦る私を、またあの穏やかな瞳で苦笑しながら見つめたままの医者は、「わかりました、行きます」と言って通話を終了する。

「ごめんっ、なに?どこ?外来?なんか、話長くなっちゃって…」

そんな私をクスリと笑って上から見下ろす医者は、次の瞬間には私の腕をグイッと引き寄せた。

< 353 / 365 >

この作品をシェア

pagetop