だから、恋なんて。

伝票を持って立ち上がる雫を視線で追う。
後姿だけど、この間より太っても痩せてもない雫に少しだけホッとする。

失恋したって軽く言っても、長い長い片想いとそうそう決別できるわけない。

それでも、できることならなるべく早く、その傷が癒えて。

誰かの隣で笑う雫の姿を見たいなと思う。

「雫の心配もいいけど、先に自分の心配しなさいよ」

そう言われて、ぼーっと見ていた視線を目の前に移すと。

携帯を操作しながら口端を上げる千鶴の目が、実に愉しそう。

「ちゃんと先生には言っておいたから、仕事が終わったら駆けつけてくるんじゃない?」

「え…どこに?」

「美咲ンち」

「ええっ?私のうちなんて知らないはず…」

「今すぐにでも行きたいって言うから、取りあえず地図はメールしておいた」

ダメだ……千鶴とアイツが結託して、私が敵うわけない。

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