だから、恋なんて。
「あ~気持ちいい!もう一軒行きたいくらいだよね」
ご機嫌でお店から出た千鶴は、タクシーをひらうでもなくふらふらと歩き出す。
少し酔いを醒ます程度に歩くことはよくあるので、私も雫もその後ろからなんとなく歩き出す。
真夜中とは言っても明日は土曜日だから、人通りはまだ少なくなくて、酔っ払ったオジサンたちや恋人同士も周りにたくさんいる。
夏の終わりを表すかのように、ショーウインドーには秋物の服が並んでいて。
通りの向かいにたまに買うショップのロゴが見えて、なんとなくそっちに視線を移す。
「あれ…?」
そのお店の前を、細身で髪の長いモデル風の女の人の肩を抱いて歩く男の人。
白衣も着てなくて、眼鏡もかけていないけれど…あれは、青見先生だ。