山神様にお願い


 ウマ君が立ち上がって苦笑した。

「だーめですね、シカさん、トリップしてますよ。おーい、戻ってきてくださーい」

 隣から、店長ののんび~りした声が聞こえた。

「だから、王子様のキスで目覚めるんじゃないの?」

「何言ってるんすか、ダメですよ、虎さん。シカさんは前の恋に破れたばかりなんですから、そんなグイグイいっちゃったら嫌われますよ」

「・・・お~。ウマが俺に恋の忠告!」

「いや、だってホラ、見てくださいよこの放心状態」

「美味そう」

「――――――――違うでしょ。それに王子様って、虎さんそんな年じゃあないでしょうが」

「お前、言うようになったねえ」

 何だかなあ!な会話だけがたくさん耳から入ってくるけど、私は多分、半分も理解出来なかった。

 衝撃的な、この展開・・・。え、どうして私は店長とキス(未遂だけど)を??

 あらー?

 その時、私の世界で、波音が蘇った。現実が戻ってきて、手足にも力が宿る。

 私は突然立ち上がった。うわ!?私のいきなりの行動に、ウマ君が叫んで後ろに飛び去る。

「シカ?」

「シカさーん?」


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