山神様にお願い


 一人でブツブツと考えこんでいたら、ツルさんが指でトントンと肩を叩いた。

「とにかく、嫌じゃあなかったのよね。逃げなかったんだから」

 そう言って私を覗き込む。

「え、あの・・・嫌とかより、とにかく驚いて・・・そのー」

「はいはい。でも脂ぎった、白くてハンペンみたいな巨体のオッサンがのしかかってきたら、全力で逃げるでしょ?」

「逃げます!!」

 思わず想像してしまった。ぎゃー!そんなの嫌だあああああ~!トリハダがたった腕をさする。

「ね、だからシカちゃんの中でも虎さんは許容範囲なのかなって。龍さんがもっとさっさと手を出すかと思ったんだけど・・・。だってシカちゃんが振られた~って友達ときた夜に、お持ち帰りしなかったものねえ」

「つーるーさああああああん!!」

「あははは、また真っ赤だわ~」

 色々と、考えるのが無理になってきて、私は立ち上がる。

「シカちゃん?」

「泳いできます!!」

 そして海へ駆け出した。泳ぐぞ、私!ぐでんぐでんになるまで泳いで、疲れきって帰れば夜もぐっすり眠れるはずだ!そう思った。

 頭を空っぽにするのよ、ひばり!!

 高校生の時以来で真剣にクロールや平泳ぎを気が済むまでした。


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