山神様にお願い
 

 本当にクタクタになって浜に上がり、起きてきた龍さんと虎さんがビーチボールで遊んでいて、それをツルさんとウマ君が観戦している所へ戻った。

 個人的にはドキドキだったけど、他の誰も、そんなそぶりは見せなかった。皆物凄く普通で、私は一瞬、店長に迫られて、しかもそれを(多分)全員が知っていることなどないのかと思ってしまった。

 店長も、超普通。龍さんもいつもと変わらず、ウマ君やツルさんは賑やかに楽しんでいた。

「あ、お帰り~」

「長いこと泳いでたなー」

「フラフラしてるぞー」

「こっちおいでよ、お腹空いてない?」

 こんな台詞が来るとは思ってなくて、返事をするのがちょっと遅れたほどだった。

「・・・ただいま、です。ええと、お腹、大丈夫です」

 何か私、自分の隠れた願望か何かがあって、白昼夢でも見た?そんな感じだった。・・・やだ、店長に襲われたいとか思ってたの、もしかして?って。

 帰るぞってなったのは、海がオレンジに染まった夕方。

 重い体を引き摺って何とか車まで戻る。私は座るとほぼ同時くらいに寝てしまっていた。

 一人暮らしの部屋まで送ってもらい、ぼーっとしている間に皆と別れて、自分のベッドでまた眠った。


 体が疲れきっていて、お腹は空いていたけど、心地よい眠りだった。


 髪や体から塩や砂がパラパラと落ちて、私の小さな部屋は海の香りがした。

< 122 / 431 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop