山神様にお願い
ガラガラと店のドアが開いて、お客様が入ってくる。いつものように皆で「いらっしゃいませー!」と声を出して迎える。
お客様は、男性ばかり4人だった。
外見だけで言えば、ちょっと派手目な男の人達だった。
えーと、つまり、ちょっと気合入ったお兄ちゃん達というか・・・いや、気合いじゃないか、かなり崩れただらしない雰囲気というか。まあ、人を外見で判断しちゃダメってよく言われるけど。
何となく、怖そうな人達だったのだ。
怖そうというか、面倒臭そうな人たち。眉毛を剃っていて、じゃらじゃらとした太い金のチェーンを首や腰から下げている。眞子がここにいたら、頭から出したかと思うように高い声で言うはずだ。
『うわ、ヤンキーが来た!』って。
でも席も空いていたし、当然私達はお断りはしない。接客業の常として、いつも通りに受け入れた。
「4名様ですか、どうぞー」
私がテーブル席に案内しようと近寄ると、ニヤニヤしてやたらと前髪を伸ばした先頭の男の人が、いきなり言った。
「トラさん、いるかな~?」
って。
私は驚いて、正直にその人の顔を凝視してしまう。
え、トラさん?って、うちの夕波店長ですか?えええ?あなた、店長のお友達??って。
だって、うちの店長がお友達しているとはとても思えない外見の人たちだったのだ。あんな、にこにこと目を細めた笑顔だけではほんわかまったりモードを保っている、狐みたいな色白の店長、植物を大切に育てて山神様を信仰しているあの店長とは、結び付けようとするのが難しい外見をした人たちだった。