山神様にお願い


『何時でもいいよ。手伝える時で。俺はずっと店にいるから、裏口から入ってね』

 了解しました、そう言って電話を切る。

 とりあえず、決着としては喧嘩両成敗ってことになったみたい・・・。いやでも、龍さんダメでしょ。腕に怪我まで。店長のくらーい声を思い出す。

 ああ・・・・可哀想。留守の間に起きた悲劇と、きっと心配だろう実家の身内の方のこと。

 私に出来ることは何でもしなくちゃ!そう決心して、とにかく私は家事をすることにした。ちょっと早めに山神へ行こう。ツルさん達もきているなら、もっと話しも聞けるだろうし、そう思って。


 9月の終わりで、昼間はまだ残暑で暑いときが多いけど、夕方にもなるとやっぱり風は涼しく感じる。高い空には夕日のオレンジを受けた細長い雲が、すごい速さで飛んでいくのが見えた。

 私は汚れても大丈夫なブルーのボタンシャツを着て、夕方の4時には山神に向かった。

 片付けだしと思って化粧もほとんどしてなかった。日焼け止めにマスカラとリップグロスだけ。

 かなりの軽装で山神の裏口を入ると、店内にはツルさんがいた。

「あ、お疲れ様です」

「おはよ、シカちゃん。昨日はお疲れ様~」

 ツルさんはちょっと疲れた顔をしていた。

 私は財布とケータイだけをいれたポーチをカウンターにおいて、腕まくりをしながら聞く。


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