山神様にお願い


「大丈夫ですか?昨日何時に帰れました?寝れたんですか?」

 ツルさんは箒をもってガラスを集めながら答えた。床の上でザラザラと音がしていた。

「うん、オーナーが案外すぐ来てくれて、私は帰れたからちゃんと眠れたよー。午前中のバイトがちょっとしんどくてへばり気味だけど。でもこの後また別のに行くから、ちょっと頑張らないとね~」

 え、パワフル・・・。私は改めて尊敬の眼差しで彼女を見る。

「あの、休んで下さい。私やりますから」

「大丈夫よ。それに二人でやったほうが早いでしょ」

 私も急いで箒を掴む。店の半分はすでに綺麗になっていたから、今日中には終りそうだと安心した。

「店長は?」

 いるって言ったのになあ、と思って聞くと、ツルさんは2階を指差す。

「ついさっきから仮眠中。私がきたときにはヘロヘロだった。ウマ君は昼来てくれてたけど、講義があるからまた大学へ戻ったの」

 あ、ウマ君昼からきてたんだ!?私は焦った。暇だったのに、私も来ればよかった、そう思って。

 ぽつぽつとツルさんが話すのを聞きながら、店の中を片付ける。床に散らばったお皿のカケラや料理の残骸を集め、ゴミ袋を3重にしたものにどんどん入れていく。

 床が綺麗になったら、今度は壁に飛んだ血や調味料の雑巾でのふき取り。歪んだ電灯をもとに戻して、座敷を綺麗に拭いた。

「保険がどうのって店長が言ってましたけど、喧嘩で壊れたもののお金もらえるんですか?」


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