山神様にお願い


 私はもう力なく、椅子の座る場所に上半身を預けたままで、ゆっくりと目を開ける。瞳の表面にはとろりと水がはりついて、緑の光景をぼやかしていた。

「感動的なくらい・・・ぴったりだな」

 動かないままで私の背中にキスをして、呼吸の合間に店長が笑った。

 私は涙を一粒零す。同じことを思ってた、って。入る直前から、いや、全身を触られる前から、ううん、もしかしたらキスをされたときから判っていたのかも。

 だってすごい衝撃だったんだもの。全然嫌じゃなかった。何をされてもどこを触られてもこんなに気持ちいいとか、嘘みたいだった。

 今でこんな状態で―――――――――動かれたら――――――――私―――――――――

 その結果が怖いと思う間もなく、唐突に彼が動き出した。両手で腰をつかんで、激しく自分を打ち込んでくる。私はすぐに意識が飛んで、楽園で甘い夢を見る。

 散々揺さぶられているのに、とても安心していた。

 激しい行為だったのに、真綿でくるまれているかのような、優しさや柔らかさを感じた。

 熱くて気持ち良くて、お腹の底から沸き上がってくる感情に翻弄されて泣き声をあげる。

 店長、夕波店長・・・あなたが好きか、まだよく判りません。だけど、だけどだけど。

 私は。

 少なくとも今は―――――――――こんなに全身で、あなたが欲しいのです。



 抱きしめられたままで、眠りに落ちていった。


 もう指の一本だって、動かなかった。




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