山神様にお願い


 そうするだろうって自分でも思っていた。勿論、そうするだろうって。

 だけど私はやたらと冷えた指先で、そのまま「切」のボタンを押す。

 プツッ・・・その後の、ツー・ツーを黙って聞いていた。


 ・・・別に、何てことない会話だった。


 だけど何かが非常に気に入らなかったのだ。私はざわざわする胸を押さえて、ケータイ電話をベッドに放り投げる。

 頭が痛かった。

 なんか、嫌だった。


 ・・・女を待たせる男って・・・・。


 小さくもれ聞こえていた女性の声が耳の中にこびり付いているようだった。コタって、店長のことを呼んでいた。あなたのお母さんが、って。

 あの、婚約者って人なのかな。

 皆はトラってよぶのに、あの人はコタって。そこのところが気に入らないらしい、そう思って鏡を見ると、そこには憮然としためちゃくちゃ可愛くない顔をした私の姿があった。

「うわっ・・・何、この顔」

 ・・・何か。

 なーんか。


 ・・・・・・感じ、悪い。




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